アナルセックスは性病リスクが高い?感染する病気・予防法・検査を医師が解説
アナルセックスは、肛門や直腸の粘膜が傷つきやすいため、HIVや梅毒、クラミジア、淋病などの性感染症に感染するリスクがあります。コンドームを着用していても、皮膚や粘膜の接触による感染を完全に防げるわけではありません。
この記事では、アナルセックスで性病のリスクが高まる理由や感染する可能性がある病気、予防法、行為後の対応、検査を受ける時期について解説します。
アナルセックスは性病の感染リスクが高い
アナルセックスでは、HIVや梅毒、クラミジア、淋病などに感染する可能性があります。肛門や直腸の構造と行為中の摩擦が重なり、病原体が侵入しやすくなるためです。ここでは、感染リスクが高まる主な理由を解説します。
直腸・肛門の粘膜は薄く傷つきやすい
直腸や肛門の内側を覆う粘膜は薄く、挿入時の摩擦や圧力によって目に見えない小さな傷が生じることがあります。粘膜には感染を防ぐ役割がありますが、傷ができると体液に含まれる病原体が体内へ侵入しやすくなります。強い痛みや出血がなくても傷ついている可能性があるため、症状がないことだけで安全とは判断できません。
肛門は潤滑液が出ないため摩擦が起こりやすい
肛門には、腟のように挿入時の摩擦を抑えるための潤滑液を分泌する機能がありません。潤滑剤を使わずに挿入したり、使用量が不足したりすると、摩擦が大きくなって粘膜の傷や出血につながります。痛みを感じたまま行為を続けると損傷が広がる可能性があるため、十分な潤滑剤を使用し、違和感や痛みがあれば中止することが大切です。
出血や粘膜の傷から病原体が侵入しやすい
粘膜に傷や出血があると、精液や血液、分泌液に含まれる病原体が体内へ侵入しやすくなります。特にHIVやB型肝炎などは血液や体液を介して感染するため、コンドームなしの行為や出血を伴う行為では注意が必要です。また、肛門内の細菌が尿道や腟へ移ると、性感染症以外の感染症を引き起こすこともあります。
アナルセックスで感染しやすい性病
アナルセックスでは、細菌やウイルス、寄生虫によるさまざまな感染症にかかる可能性があります。肛門や直腸の感染は症状が出ないこともあるため、感染機会があれば適切な部位の検査を受けることが大切です。ここでは、主な病気の感染経路や症状、検査方法を解説します。
HIV・梅毒
HIVは血液や精液などの体液を介して感染し、感染初期に発熱や倦怠感、リンパ節の腫れなどが現れる場合があります。検査では血液を採取し、抗原や抗体などを調べます。
梅毒は、肛門周囲や直腸内にある病変との接触でも感染します。感染部位のしこりや潰瘍、全身の発疹などが主な症状です。HIVと梅毒には無症状の期間があるため、見た目や体調だけでは感染の有無を判断できません。感染機会があった場合は血液検査を受けましょう。
クラミジア・淋病・マイコプラズマ
クラミジアや淋病は、肛門や直腸の粘膜に感染することがあります。症状が現れる場合は、肛門の痛みや違和感、排便時の痛み、出血、粘液・膿のような分泌物などがみられますが、感染していても症状がないケースは少なくありません。
マイコプラズマも性的接触によって感染する可能性があります。尿検査や性器の検査だけでは肛門・直腸の感染を確認できない場合があるため、行為があった部位を医療機関へ伝え、必要な検査を相談してください。
性器ヘルペス・尖圭コンジローマ・エムポックス
性器ヘルペスでは、肛門周囲に痛みを伴う水疱や潰瘍が現れることがあります。尖圭コンジローマでは、肛門周囲や肛門内にいぼができる場合があります。
エムポックスは性感染症に限定される病気ではありませんが、発疹や体液を介した密接な接触によって感染するため、性行為も感染経路の一つです。これらはコンドームで覆われていない皮膚や病変との接触でも感染する可能性があります。病変がある場合は接触を避け、医療機関を受診しましょう。
A型肝炎・B型肝炎・赤痢アメーバ症
A型肝炎と赤痢アメーバ症は、便に含まれる病原体が口に入ることで感染します。そのため、アナル舐めなどの口と肛門が接触する行為では注意が必要です。A型肝炎では発熱や倦怠感、黄疸、赤痢アメーバ症では下痢や腹痛、血便などが現れる場合があります。
B型肝炎は、血液や体液を介して感染し、倦怠感や吐き気、黄疸などを起こすことがあります。A型肝炎とB型肝炎はワクチンによる予防が可能です。
肛門・直腸に性病が感染したときの症状
肛門や直腸の性感染症では、痛みや出血などが現れる場合があります。一方で、感染していても症状がみられないケースもあります。主な症状と注意点を確認しましょう。
肛門の痛み・かゆみ・出血・分泌物が現れる
肛門や直腸に性感染症が感染すると、肛門の痛みやかゆみ、違和感、排便時の痛み、出血などが現れる場合があります。粘液や膿のような分泌物、水疱、潰瘍、いぼなどがみられることもあります。
ただし、これらの症状は痔や裂肛、皮膚炎などでも起こるため、症状だけで性感染症とは判断できません。症状が続く場合や、感染の可能性がある行為の後に異変が現れた場合は、医療機関で診察と検査を受けてください。
症状がなくても感染していることがある
直腸クラミジアや直腸淋病などは、感染しても症状が現れないことがあります。自覚症状がないまま性行為を続けると、パートナーへ感染を広げる可能性があります。
また、症状がないことや肛門の見た目に異常がないことだけでは、感染していないとは判断できません。コンドームなしでアナルセックスをした場合や、パートナーの感染が判明した場合は、症状の有無にかかわらず検査を検討しましょう。
アナル舐めでも性病に感染する
アナル舐めは挿入を伴いませんが、口や舌が肛門周辺の皮膚・粘膜・便に触れるため、性感染症や腸管感染症に感染する可能性があります。ここでは、主な病気と感染リスクを下げる方法を解説します。
口と肛門の接触で感染する病気
アナル舐めでは、肛門周囲にある梅毒やヘルペス、尖圭コンジローマなどの病変に口が触れることで感染する可能性があります。また、便に含まれる病原体が口に入ると、A型肝炎や赤痢アメーバ症などに感染することもあります。
口内炎や歯茎からの出血、肛門周辺の傷や出血がある場合は、病原体が侵入しやすくなるため接触を控えてください。挿入がなくても感染する可能性があることを理解しておくことが大切です。
デンタルダムやコンドームで感染リスクを下げる
アナル舐めによる感染リスクを下げるには、口と肛門の間にデンタルダムを挟み、皮膚や粘膜が直接触れないようにします。コンドームを切り開いてシート状にしたものを代用する方法もありますが、一度使用したものを裏返したり、使い回したりしないでください。
行為前に肛門周辺を洗うことは衛生管理に役立ちますが、性感染症を完全に予防できるわけではありません。病変や出血、下痢などがある場合は行為を控えましょう。
アナルセックスによる性病の予防方法
アナルセックスによる感染リスクを完全になくすことはできませんが、複数の対策を組み合わせることで下げられます。コンドームだけに頼らず、潤滑剤やワクチン、予防薬、定期検査も活用しましょう。
最初から最後までコンドームを着用する
コンドームは挿入前に装着し、行為が終わるまで外さずに使用します。使用前に有効期限や包装の破損を確認し、先端の空気を抜いて根元まで装着してください。途中から着けたり、射精前に外したりすると、粘膜や分泌液が接触して感染する可能性があります。
ただし、コンドームで覆われていない皮膚や病変から感染する梅毒、ヘルペス、尖圭コンジローマなどを完全に防ぐことはできません。病変や出血がある場合は行為を控えましょう。
水性またはシリコン系の潤滑剤を十分に使用する
十分な量の潤滑剤を使用すると、挿入時の摩擦を抑え、肛門・直腸の粘膜損傷やコンドームの破損を防ぎやすくなります。行為中に乾いてきた場合は、無理に続けず潤滑剤を追加してください。
ラテックス製コンドームに油性のローションやオイルを使用すると、素材が劣化して破れやすくなることがあります。水性またはシリコン系の潤滑剤を選び、コンドームと併用できるか商品表示を確認しましょう。
肛門から腟や口へ移るときはコンドームを交換する
肛門で使用したコンドームを着けたまま腟や口へ移ると、便や腸内細菌が別の部位へ運ばれ、感染症の原因になることがあります。接触する部位を変えるたびに使用済みのコンドームを外し、新しいものへ交換してください。
性具を複数の部位やパートナー間で共用する場合も、洗浄したうえでコンドームを交換します。使用済みのコンドームを裏返して再使用したり、2枚重ねたりすることは避けましょう。
ワクチン・PrEP・定期検査を活用する
A型肝炎、B型肝炎、HPVは、ワクチンによって感染や関連疾患のリスクを下げられます。接種対象や回数は年齢や接種歴などで異なるため、医療機関へ相談してください。
HIVの感染リスクが高い場合は、感染前から薬を服用するPrEPも選択肢です。ただし、PrEPではHIV以外の性感染症を予防できないため、コンドームや定期検査との併用が必要です。検査の頻度は、性行為の状況やパートナー数などを医療機関へ伝えて相談しましょう。
コンドームなしのアナルセックス後にすべきこと
コンドームを使用しなかった場合や、行為中に破損・脱落した場合は、性感染症に感染する可能性があります。行為後の洗浄や排便では感染を防げないため、自己判断で様子を見続けず、必要な対応を確認してください。
HIVが心配な場合は72時間以内にPEPを相談する
PEPは、HIVに感染した可能性がある行為の後に抗HIV薬を服用し、感染リスクを下げる方法です。原則として行為後72時間以内に開始する必要があり、早く始めるほど効果が期待できます。
PEPが必要かどうかは、行為の内容や相手の感染状況などをもとに医師が判断します。費用や受診方法は医療機関によって異なるため、HIV感染が心配な場合は、できるだけ早くPEPに対応している医療機関へ相談してください。
検査結果が分かるまでは性行為を控える
感染の可能性がある行為の後は、検査で確認できるまで性行為を控えることが望ましいです。性感染症には検査で確認できるようになるまでの期間があり、行為直後の検査が陰性でも感染を否定できない場合があります。
肛門の痛みや出血、分泌物、発疹、発熱などがある場合は、検査時期を待たずに受診してください。感染が確認された場合は、医師の指示に従って治療し、必要に応じてパートナーも検査を受けることが大切です。
アナルセックス後に受ける性病検査
アナルセックス後の検査では、感染の可能性がある病気だけでなく、接触した部位に適した検体を調べることが重要です。検査を受ける際は、アナルセックスがあったことを医療機関へ伝えましょう。
肛門・直腸の検体を採取する検査が必要になる
直腸クラミジアや直腸淋病は、尿検査や性器の検査だけでは確認できない場合があります。肛門・直腸に感染した可能性がある場合は、綿棒などで肛門内の分泌物を採取し、病原体の有無を調べます。
HIVや梅毒、肝炎などは主に血液検査で確認します。アナル舐めやオーラルセックスも行った場合は、咽頭の検査が必要になることもあります。検査部位が不足しないよう、行為の内容を正確に伝えてください。
性病ごとの検査時期を確認して受ける
性感染症は、感染直後では病原体や抗体を十分に検出できず、正しい結果が得られない場合があります。検査できる時期は病気や検査方法によって異なるため、行為からの日数を伝えて医療機関へ相談しましょう。
早い時期に検査を受けて陰性だった場合も、医師の判断で期間を空けた再検査が必要になることがあります。症状がある場合は検査時期まで待たずに受診し、適切な検査時期と再検査の必要性を確認してください。
肛門の強い痛み・出血・発熱があれば早めに受診する
肛門の強い痛みや出血、大量の分泌物、潰瘍、水疱、発熱などがある場合は、早めに医療機関を受診してください。出血が止まらない、強い腹痛がある、異物が取れないなどの場合は、性感染症以外の損傷も考えられるため、速やかな診察が必要です。
受診先に迷う場合は、性感染症内科、肛門科、消化器外科、泌尿器科などへ相談できます。症状や行為の内容を伝え、必要な診察と検査を受けましょう。
アナルセックスと性病に関するよくある質問
アナルセックス後に生じやすい疑問について解説します。感染リスクは行為の内容や予防策、パートナーの感染状況などによって異なるため、数値だけで判断しないことが大切です。
コンドームを着ければ性病の感染を完全に防げる?
コンドームを最初から最後まで正しく着用すると、HIVやクラミジア、淋病などの感染リスクを下げられます。ただし、破損や脱落が起こることがあるほか、コンドームで覆われていない皮膚や病変から梅毒、ヘルペス、尖圭コンジローマなどに感染する可能性があります。
コンドームだけで完全に予防できるわけではありません。十分な潤滑剤やワクチン、PrEP、定期検査などを組み合わせましょう。
アナルセックスでHIVに感染する確率はどのくらい?
CDCは、HIV陽性者のウイルス量が抑制されておらず、コンドームやPrEPなどを使用しない場合、1回のアナルセックスで受け入れる側が感染する確率を約1.38%、挿入する側を約0.11%と推定しています。
ただし、実際の確率は相手のウイルス量や出血の有無、ほかの性感染症、予防策などで変わります。HIV陽性者が治療を継続し、血液中のウイルス量が検出限界未満に維持されている場合、性行為によるHIV感染は起こらないとされています。
アナルセックスで後遺症が残ることはある?
強い摩擦や無理な挿入によって、裂肛や出血、肛門周囲の損傷が起こり、痛みなどが長引く場合があります。また、性感染症を治療せずに放置すると、病気によっては全身へ影響が及んだり、合併症につながったりする可能性があります。
アナルセックスをしただけで必ず後遺症が残るわけではありません。痛みや出血が続く、便が漏れる、排便しにくいなどの症状がある場合は、自己判断で放置せず肛門科や消化器外科などを受診してください。
アナルセックス後に不安があれば肛門・直腸を含む性病検査を受けよう
アナルセックスは、肛門・直腸の粘膜が傷つきやすく、HIVや梅毒、クラミジア、淋病などに感染するリスクがあります。感染を予防するには、コンドームと十分な潤滑剤を使用し、ワクチンやPrEP、定期検査などを組み合わせることが大切です。
肛門・直腸の性感染症は、感染していても症状が現れない場合があります。また、尿検査や性器の検査だけでは肛門・直腸の感染を確認できないこともあります。検査時にはアナルセックスがあったことを医療機関へ伝え、接触した部位に適した検査を受けましょう。
性病ドットコムでは、性感染症の検査や治療に関する相談を受け付けています。アナルセックス後の感染が心配な方や、肛門の痛み・出血などがある方は、症状の有無にかかわらず早めにご相談ください。

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