同性間の性的接触が主な感染経路に|HIV・エイズの最新動向と予防策【世界エイズデー】

赤松 敬之(あかまつ たかゆき)

エイズと聞くと「不治の病」という恐ろしいイメージを持つ方も少なくありません。
確かに治療しないまま進行すると、免疫力が極端に低下し、命に関わる重篤な感染症やがんを引き起こす可能性があります。

しかし、医学の進歩により現在ではHIV感染を早期に発見し、適切に治療することでエイズの発症を防ぐことが可能になっています。

この記事では、世界エイズデーの意義、HIV・エイズの基礎知識、感染経路、最新の日本での感染状況、そして予防方法について解説します。

世界エイズデーとは

世界エイズデー(World AIDS Day)は、1988年にWHO(世界保健機関)が制定した国際的な啓発の日です。

  • 毎年12月1日
  • HIV/エイズに関する正しい知識の普及
  • 感染者や患者への差別・偏見をなくすことが目的

シンボルマークの「レッドリボン」には、「エイズに対して偏見を持たず、感染者を差別しない」というメッセージが込められています。

HIVとエイズの違い

  • HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
    • 血液体液を介して感染するウイルス
    • マクロファージやTリンパ球に感染して免疫力を低下させる
  • エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)
    • HIV感染が進行し、免疫力が著しく低下した状態
    • 日和見感染やがんなど「エイズ指標疾患23種」のいずれかにかかると診断される

つまり、HIVに感染してもすぐにエイズになるわけではなく、早期治療によって発症を防ぐことができるのです。

HIVの感染経路

HIVは以下の3つの経路で感染します。

性的接触(性行為による感染)

  • 膣性交・肛門性交・口腔性交などで感染
  • 女性は腟粘膜、男性は性交時にできる小さな傷から侵入
  • 男性同士の性行為では腸管粘膜から感染するリスクが高い

母子感染

  • 妊娠中(胎内感染)、出産時(産道感染)、授乳時(母乳感染)
  • 予防方法
    ・妊娠初期のHIV検査
    ・帝王切開や抗HIV薬の投与
    ・人工乳による育児

血液感染

  • 注射器の使い回し
  • 医療現場での針刺し事故
  • 輸血(日本では厳しい検査でリスクは極めて低い)

日本では特に性的接触による感染が大多数を占めています。

日本のHIV感染者とエイズ患者の最新動向(2023年・2024年)

HIV/エイズの感染動向は年々変化しており、正確な現状を把握することが感染予防や啓発活動にとって非常に重要です。

厚生労働省や国立感染症研究所の最新発表(2023年・2024年速報値)によると、日本におけるHIV感染者・エイズ患者の報告件数は以下のとおりです。

2023年の状況

  • 新規HIV感染者数:669人(2022年から37人増加。7年ぶりの増加
  • エイズ患者数:291人(前年比増)
  • 合計:960人
  • 検査件数:106,137件(新型コロナ禍後の回復)
  • 特徴
    • 感染経路の63%が同性間の性的接触
    • 約3割がHIV感染に気づかず、エイズ発症で初めて判明

2024年の状況

  • 新規HIV感染者数:664人(前年比微減)
  • エイズ患者数:336人(前年比増)
  • 合計:1,000人(3年ぶりに大台に)
  • 検査件数:108,988件
  • 感染経路の傾向
    • HIV感染者の63%、エイズ患者の51%が同性間性的接触

傾向と課題

同性間の性的接触による感染が多数を占めており、的確な情報提供と予防策の普及が必要とされています。
HIV感染者数はほぼ横ばいですが、エイズ患者が増加傾向にあり、診断の遅れが課題となっています。

保健所や医療機関によるHIV検査の実施件数はコロナ禍から回復傾向にあり、早期発見に役立っています。若年層や検査未受診者への啓発が今後の大きな課題です。

HIV感染の予防方法

  • コンドームを正しく使用する
    • 性行為時には必ず着用
    • 膣性交だけでなく、肛門性交や口腔性交でも有効
  • 血液を介する行為を避ける
    • 注射器の共用をしない
    • カミソリや歯ブラシの共用も避ける
  • 定期的に性感染症検査を受ける
    • HIVは無症状で進行するため、早期発見には検査が不可欠
    • 保健所や医療機関で匿名・無料検査が可能

まとめ

  • 12月1日の世界エイズデーは、HIV/エイズに対する理解と差別解消を呼びかける国際的な啓発の日
  • HIV感染=エイズ発症ではなく、早期治療でエイズを防ぐことができる
  • 感染経路は性的接触・母子感染・血液感染の3つ
  • 日本では若い男性層の感染が増加傾向
  • コンドーム使用と定期的なHIV検査が最大の予防策

HIV/エイズは「恐れる病気」から「予防・治療ができる病気」へと変わってきました。
正しい知識と検査・予防で、自分と大切な人を守りましょう。

参考文献

少しでも違和感を感じたら、
一度検査を受けてみませんか?
西梅田シティクリニックで受診をしよう。

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監修医師紹介
赤松 敬之(あかまつ たかゆき)
赤松 敬之(あかまつ たかゆき)
医療法人 星敬会 理事長
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