性病の知識

エイズになると長生きできないって本当?

赤松 敬之(あかまつ たかゆき)

HIVやエイズと聞くと「死に直結する病」というイメージがありませんか?
以前までは不治の病とされていましたが、現在ではきちんと治療を行えば普通の生活を送ることができるようになりました。
HIVとエイズは一緒にされることが多いですが、同じものではありません。
正しい知識を身につけ、自身や大切なパートナーの身体を守りましょう。

HIVってなに?

HIVとは、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)のことで、様々な細菌やウイルスなどの病原体からヒトの身体を守る「免疫細胞」であるTリンパ球やマクロファージに感染するウイルスです。

HIVがTリンパ球やマクロファージに感染すると、これらの免疫細胞を壊し、免疫力を低下させてしまいます。
すると、普段は感染しないような病原体に感染しやすくなったり、様々な病気を引き起こしてしまいます。

このように、HIVによって引き起こされる病気をエイズ(後天性免疫不全症候群|AIDS(Acquived Immunodeficiency Symdrome))と言います。
代表的な23の疾患が決められており、HIVに感染した上でそれらに発症するとエイズと診断されます。

どこから感染するの?

HIVは感染している人の血液・精液・膣分泌液・母乳に多く含まれています。
これらが粘膜(膣・口腔内・腸管など)や傷口から体内に侵入することで感染します。
HIVの感染経路は「性的感染」「血液感染」「母子感染」の3つとされています。

  • 性的感染
    HIV感染で最も多い感染経路とされており、性的接触によって精液・膣分泌液に含まれるHIVが粘膜から体内に侵入することで感染します。
     
  • 血液感染
    輸血や注射器・注射針の共用による麻薬の回し打ち、医療現場における針刺し事故などによって、感染者の血液が他の人の体内に侵入することで感染します。
     
  • 母子感染
    妊娠中や出産時などに胎内・産道・母乳などを介して母体から胎児へと感染します。
    妊娠初期のHIV検査の実施や抗HIV療法など、様々な対策によって感染を防ぐことが可能です。
     

唾液や涙、尿などの体液では他の人を感染させるウイルス量は分泌されていないため、咳やくしゃみなどの飛沫感染はせず、日常生活を送る上で感染する機会はありません。

HIVに感染すると必ずエイズが発症する?

HIVに感染すると「感染初期」「無症候期」「エイズ発症期」の3段階で進行していきます。

感染初期

Tリンパ球やマクロファージに感染し、ウイルスが急激に増加します。
免疫力が下がり、発熱・リンパ節の腫れ・皮疹・頭痛・筋肉痛などの症状が現れることもありますが、数週間で自然と治ります。
これらはHIVだけに現れる症状ではないため、検査を受けない限りHIVだとは断定できません。

無症候期

HIV感染後、短期間でエイズ発症する人もいれば、無症候期が数年~10数年続く人もいます。
この期間の間にもHIVはどんどん増殖しており、免疫細胞は次々に死滅していきます。
すると免疫不全状態となり、様々な病気にかかりやすくなってしまいます。

エイズ発症期

HIV感染に気付かず、未治療のまま時間が経つと、免疫細胞が急激に減少し、普通の免疫状態ではほとんどかかることのない日和見感染症や悪性腫瘍を発症してしまうことがあります。
また、食欲の低下や下痢、低栄養状態、衰弱などが著明となります。

※日和見感染症:健康な状態では病気を起こさないような弱い細菌・真菌・ウイルスなどによって引き起こされる感染症。免疫機能が低下すると生じる。

エイズと診断される23の疾患

エイズは厚生労働省が定める23の疾患を基準に診断されます。
HIVに感染した上で、以下の23の疾患のうち1つ以上罹患しているものがあればエイズとされます。

  1. カンジダ症(食道・気管・気管支・肺)
  2. クリプトコッカス症(肺以外)
  3. コクシジオイデス症(1:全身に播種したもの/2:肺・頚部・肺門リンパ節以外の部位に起こったもの)
  4. ヒストプラズマ症(1:全身に播種したもの/2:肺・頚部・肺門リンパ節以外の部位に起こったもの)
  5. ニューモシスチス肺炎
  6. トキソプラズマ脳症(生後1ヶ月以後)
  7. クリプトスポリジウム症(1ヶ月以上続く下痢を伴ったもの)
  8. イソスポラ症(1ヶ月以上続く下痢を伴ったもの)
  9. 化膿性細菌感染症(13歳未満で、ヘモフィルス、連鎖球菌等の化膿性細菌により以下のいずれかが2年以内に、2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの)
     ⑴敗血症
     ⑵肺炎
     ⑶髄膜炎
     ⑷骨関節炎
     ⑸中耳・皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍
  10. サルモネラ菌血症(再発を繰り返すものでチフス菌によるものを除く)
  11. 活動性結核(肺結核または肺外結核)
  12. 非結核性抗酸菌症(1:全身に播種したもの/2:肺・頚部・肺門リンパ節以外の部位に起こったもの)
  13. サイトメガロウイルス感染症(生後1ヶ月以後で、肝、脾、リンパ節以外)
  14. 単純ヘルペスウイルス感染症(1:1ヶ月以上持続する粘膜、皮膚の潰瘍を呈するもの/2:生後1ヶ月以後で気管支炎、肺炎、食道炎を併発するもの)
  15. 進行性多巣性白質脳症
  16. カポジ肉腫
  17. 原発性脳リンパ腫
  18. 非ホジキンリンパ腫
  19. 浸潤性子宮頚癌
  20. 反復性肺炎
  21. リンパ性間質性肺炎/肺リンパ過形成:LIP/PLH complex(13歳未満)
  22. HIV脳症(認知症又は亜急性脳炎)
  23. HIV消耗性症候群(全身衰弱又はスリム病)

HIVは不治の病ではなくなった!

以前までHIVおよびエイズは不治の病とされていました。
しかし、近年では体内からHIVを完全に排除できる治療法はないものの、抗HIV薬の服用によってウイルスの増殖を抑え、免疫力を維持することが可能となっています。

抗HIV薬には以下の5種類があり、この中から3種類異常を併用して服用します。

  1. 核酸系逆転写酵素阻害剤
  2. 非核酸系逆転写酵素阻害剤
  3. プロテアーゼ阻害剤
  4. インテグラーゼ阻害剤
  5. 侵入阻害剤


現在では、1錠に複数の薬の成分が含まれているものがあり、1日1回服用することでHIVのウイルス量が抑えられ、他の人へ感染させるリスクも低減されます。

しかし、服用を続けないと薬に対する耐性がつき、薬が効かなくなってしまうため必ず続けて服用する必要があります。

エイズ発症後、治療をしなかった場合の予後は2~3年と言われています。
エイズ発症前にHIV感染に気付くことができれば、早期に治療を始められ、エイズ発症を防ぐことができるため、少しでも不安なことや心当たりがあるようであればHIV検査を受けることをおすすめします。
エイズ発症後でも、早期治療ができれば免疫力を回復・維持することができます。

HIVは感染を放置してしまうとエイズを発症し、重篤な健康被害を引き起こす恐れがあります。
大切なのは早期発見・早期治療です。
検査をしないと断定できない感染症のため、少しでも気になることがあれば迷わず検査を受けるようにしましょう。

西梅田シティクリニックではお気軽に性病検査を受けることができます。
予防のための定期検査やブライダルチェックなど、症状がなくても検査が可能です。
ご不安なこと、ご不明な点等ございましたらお気軽にご相談ください。

◆性感染症内科/西梅田シティクリニック:https://nishiumeda.city-clinic.jp/std/

監修医師紹介
赤松 敬之(あかまつ たかゆき)
赤松 敬之(あかまつ たかゆき)
医療法人 星敬会 理事長
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